2023419日・広島‐国連訓練調査研究所(ユニタール)持続可能な繁栄局・広島事務所とユニタール協会の共催により、G7参加国出身で現在広島に在住している若者計7名を招いたパネルディスカッション「来てみんさい!若者版G7!~来てみてわかったひろしま~」が417日に広島国際会議場において開催されました。

UNITAR

パネルディスカッションでは、パネリストがそれぞれ広島に来る前や海外から見た広島の街の印象と、実際に生活してみて感じている姿についての違いや、広島から発信しうる平和のメッセージの意義、若者がどう声を挙げていくかなどについて、活発な議論が行われました。

広島の印象について

UNITAR

ルカ・デンサーさん(ドイツ)は、「Hiroshima」をローマ字で検索した場合には原爆に関する記述が先行するのに対して漢字で「広島」と検索した際には風光明媚なスポットなど幅広い検索結果が得られることに言及し、「教科書の中のHiroshimaと現実の広島は全然違う」と述べました。

アデリン・ルメテさん(フランス)も、歴史を学ぼうとして多くの人がすぐに得られる情報としての広島と、豊かな自然と人情味を持った暮らす場所としての広島は異なると説明し、「私が知っている広島をみなさんにも知ってほしい」と訴えました。

広島と平和

UNITAR

アルナルド・アンドレア・アンジュッリさん(イタリア)は、家族とともに被爆2世と話した体験などをもとに、「広島を訪れた人は絶対に平和主義者になる」という母の言葉を紹介。都市自体が回復力を示しており、「平和」をポジティブに語ることのできる土壌が育まれていることのメリットを述べました。

広島が世界へ向けて今何を発信すべきかについては、デジタル化や被爆者の思いの承継など様々な観点から発言がありました。

デイジー・ウィットビーさん(イギリス)は、自らのボランティア経験などから被爆樹木など「広島にしかないもの」をさらに活用して啓発を強めるアイデアに言及。被爆建物の活用などにも議論が及びました‘。

サウザー 一左(いっさ)さん(アメリカ)は、世界と語り合うには「広島がまず世界を受け入れなければ」と述べ、一方的に思いを伝えるのではなく互いに理解し合うためのステップが重要であるとの認識を示しました。)アンジュッリさんをはじめ、各地での辛い記憶を「昔話」とするのではなく、それぞれ自分のこととして大事に内在化していくことの重要性が論じられました。

被爆3世でもある石橋 二昂(いしばし にほ)さん(日本)は、広島が平和都市として今世界に認識されているのは被爆者らの努力があった帰結であると述べ、都市自体のグローバル化や被爆者の高齢化が進む中、自らの世代の抱負を語りました。

若い世代へのメッセージを問われ、サウザーさんは、原爆投下の目標となった相生橋から原爆ドームを、そしてその対面にある本川小学校を見て思いをはせることを提案。「10人に伝えて全員が聞いてくれなくてもいい。そのうちの1人でも次の人に伝えて鎖のようにつながっていって、世界平和に向かってみんながその鎖の一部分になっていけるならいい」と語りました。

ブレイディ・アンダーソンさん(カナダ)は、「年齢は関係ない。ポジティブなイメージがあるなら、どんな小さなことでも今すぐはじめて」と聴衆を激励しました。

G7/G20 Youth Japan代表をゲストに招いて

UNITAR

会場には、G7G20サミットにあわせて若者からの政策提言を行い若者の声を政治に反映させることで国際的な課題の解決を目指す任意団体G7/G20 Youth Japanのメンバーも駆け付けました。大倉由莉(おおくらゆり)共同代表は、4月上旬に開催されたY7 Summit 2023 Japanでの成果や代表団の広島視察について概観。被爆者との対話をはじめとした実地での見聞は、書籍やデータでの予備的な学習とは全く異なる感慨を代表団に与えており、提言として岸田総理に手渡された提言書にも反映されたと説明しました。同代表団は、①平和と安全 ②経済 ③デジタル ④環境 ⑤グローバルヘルス の5項目から成るこの提言書の啓発に努めていくと語りました。

 

質疑応答の中では、気候危機との関連や、広島で「平和」をビジネスに利用することをタブー視されていることへの意見などについても論じられました。

【パネリスト】

  • ルカ・デンサーさん(ドイツ)
  • デイジー・ウィットビーさん(イギリス)
  • アルナルド・アンドレア・アンジュッリさん(イタリア)
  • サウザー一左(いっさ)さん(アメリカ)
  • アデリン・ルメテさん(フランス)
  • ブレイディ・アンダーソンさん(カナダ)
  • 石橋 二昴(いしばし にほ)さん(日本)

【ゲスト】G7/G20 Youth Japan 代表

  • 大倉 由莉(おおくら ゆり)さん
  • 楢崎 桃花(ならさき ももか)さん

国連ユニタール協会の佐々木茂喜理事長が締めくくりに「こんなに素敵な仲間たちが広島にいてくれることをうれしく、誇りに思う」とあいさつ。故浜井信三元広島市長の言葉を用い、世界の様々な課題を前に、広島に縁のある人には「この混沌とした時代に先駆けとなるのだという使命を負っている」と協働への期待を仰ぎました。

国連ユニタールとは

国連訓練調査研究所(ユニタール)は、研修事業に特化した国連機関として、世界レベルの知識や技術の共有を進めています。1963年の設立以来、よりよい未来のために変化を生み出せる人材を世界各地で送り出してきました。2021年には370,139人が受講。ジュネーブ本部のほか、ニューヨーク事務所、広島事務所、ボン事務所があり、世界中に様々なネットワークをもっています。2019年からは持続可能な繁栄局のもと、広島事務所と、ジュネーブ本部の財政・貿易ユニットの職員がともに、起業やリーダーシップ、貿易と金融、デジタル技術、軍縮などについてプログラムを展開しています。紛争後復興の過程にある国の人々への研修などには、原爆投下後から現在の平和都市に至る過程を一つの復興モデルとして講義に組み込むなど、平和で公正な社会の実現にも貢献しています。日本での公的な支援組織として、2019年に一般社団法人「国連ユニタール協会」が設立され、国連ユニタールの広報・啓発活動に協力しています。

シェアする