汚職は民主主義とグッドガバナンスを弱体化し、政策決定の過程をゆがめ、説明責任を果たさず、法の支配を脅かし結果的に様々な公共サービスの提供に支障をきたします。また、持続可能な開発の大きな壁となり、情勢不安、テロや反政府活動を引き起こす要因にもなり得ます。
特に法執行を担当する省庁や組織内における汚職は問題であり、国境を越えた反政府活動や犯罪組織の増加、地域コミュニティの治安悪化や経済崩壊につながります。法執行機関は公務員のロールモデルとして行動し、人権に配慮した法の支配と司法制度を国民に保証する必要があります。つまり法執行機関の能力強化が行政機関全体の強化につながるとも言えます。効率的かつ効果的な行政体制を構築し、テロや反政府活動を防ぐためには国際社会が法執行機関の汚職の原因を解明し、対処していくことが必要となります。
「国連ユニタール広島事務所 法執行と汚職防止研修」は長年の汚職対策研修の経験と専門性に基づき実施しています。
2015年 アフリカ・サヘル諸国のための汚職対策プログラム
アフリカ大陸の西側に広がる約3500㎞の広大なサヘル地域には約6,670万人の人々が住んでいます。長年サヘル地域では数多くの国境を越えた構造的な開発課題や脅威を抱えてきました。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数によると、調査を行った175か国のうちサヘル諸国のブルキナファソは85位、チャド共和国は154位で、行政機関の汚職による悪影響を受けやすい結果が示されています。サヘル地域の国境は穴だらけであるため多くの課題は国境を越えた地域全体で対処する必要があります。本研修では熱意のあり同じ志を持つ行政官やNGO関係者の地域間ネットワーク構築を目的としています。
2015年度「国連ユニタール広島事務所 アフリカ・サヘル諸国のための法執行と汚職対策研修」ではカメルーン共和国、セネガル共和国、チャド共和国、ナイジェリア、ニジェール共和国、ブルキナファソ、マリ共和国、モーリタニア・イスラム共和国の8か国から中堅の政府職員と市民団体から各国2名ずつ研修生を招へいしました。
学習手法
本研修では下記の異なる学習手法を組み合わせ参加型で研修を行います。
- 対話型講義
- グループ演習
- 個人演習
- 参考文献を読む
- 視察
- 個人プロジェクト・課題
学習目的
第1回ワークショップ-透明性と汚職対策(5日間 セネガル、ダカール)
ワークショップ参加後に研修生は下記の項目を理解し達成することを目的としています。
- 地域の法執行の現状、課題と根本的原因
- 透明性と汚職対策の基本要素
- 法執行における汚職防止対策
- 健全性の確保
- 一般市民の汚職防止に関する意識向上・啓発戦略
- 汚職の「ゼロ容認文化」促進のための戦略
- 行政機関が必要とするリーダシップスキル
- 効果的な行動計画書作成方法
第2回ワークショップ-コミュニケーションスキルとトレーナー養成(TOT)研修(8日間 広島・東京)
ワークショップ参加後に研修生は下記の項目を理解し達成することを目的としています。
- 倫理と汚職対策の関係性
- 効果的なコミュニケーション手法
- 効果的なトレーナーの定義
- 研修企画から実施までの流れ
- 実践コミュニティの重要性
- 効果的な学習目的の設定
- 研修生中心の研修内容の開発
- 成人教育の重要要素
- 研修の成果とインパクトの評価
オンライン講義(3回)
オンライン講義参加後に研修生は下記の項目を理解し達成することを目的としています。
リスクの軽減
- リスク管理の過程
- プロジェクト企画の段階でのリスクアセスメント
- リスク対応計画の作成
リーダーシップ
- 各自のリーダーシップのスタイル特定
- チーム作りに重要な要素
- 効果的なコミュニケーション手法
チェンジマネジメント(組織変革)
- チェンジマネジメントの2つの基本要素-戦略的変革と個人・チームの変革
- トランジションマネジメントの過程
- 変革に抵抗を感じる原因と対策
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