人材育成を支援するアフガニスタン初のシンクタンク
2021年4月22日・カブール/広島 - アフガニスタンでの平和構築と人材育成を支援するため、国連ユニタール持続可能な繫栄局/広島事務所とアフガニスタン初のシンクタンクCapacity for Afghanistan Think Tank(C4A)が協力覚書を締結し、ともに研修を実施する運びとなりました。
学びの機会を拡充し、アフガニスタン全土でより多くの人々と培った知恵を共有するため、両団体はともに資金を調達し、研修プログラムを履行して参ります。平和構築にとどまらず、起業や民間セクターの強化、革新的なリーダーシップ育成、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント、貿易と金融、汚職対策と犯罪撲滅といった、持続可能な繁栄局の知見を最大限に活かした人材開発や組織開発を進めていきます。
C4A(アフガニスタンの能力開発シンクタンク)は、紛争が絶えないアフガニスタンで、ガバナンス強化と公正な社会の構築を目指し、意欲ある人材の育成と意識改革を進める活動を行っています。
C4Aは2017に設立され、2020年1月に正式な団体として政府から認定を受けました。アフガニスタンの持続的かつ平和な開発について知識人が議論する場を提供しています。C4Aの会員はすでに1,500人を超えており、そのうち240人は女性です。積極的に女性会員を誘致しており、数は増え続けています。C4Aはアフガニスタンが抱える課題解決のための提案や裏付けとなる根拠を政府に提出することを目的としており、どの政党にも帰属していません。
国連ユニタールはC4Aと協力し、人材育成を担う高度な知識やスキルを持つ講師等の育成を支援します。
「C4Aに参加する才能あふれる人たちはアフガニスタンの現状について議論する場を作り、前向きな解決策を論文、記事や出版物として発表し、政府や世界各国のシンクタンク等に発信しています」と創設者のImtiaz Sharifiさんは話します。Sharifiさんはアフガニスタン国税庁の副部長を務めており、国連ユニタールの社会人向け修士課程の卒業生でもあります。また、国連ユニタール広島事務所・持続可能な繫栄局主催のアフガニスタン奨学プログラムでは何度も講師やコーチを務めています。本奨学プログラムは、アフガニスタン国民のエンパワーメントと自身が変革の担い手となるよう、長期的なリーダーシップ育成や組織の運営管理体制向上を目指し、アフガニスタンの人々に刺激を与える存在となっています。
「現在アフガニスタンでは約4,800の団体が登録されています。しかし、正式なシンクタンクは一つもありません。法律の文言の中でさえも『シンクタンク』という言葉は見当たりません。C4Aの共同創立者とシンクタンクについて議論を重ねました。その際、アフガニスタンの知識人をより一層強化しようというアイディアを思いつきました。これは新しい考え方でしたが、少しずつ賛同者が増え、現在ではたくさんの会員が参加して活動しています」
C4Aの会員はボランティアです。技術的な助言や政策概要作成などの活動を通じてアフガニスタン社会全体にとっても、また、会員個人の仕事面やネットワーク構築にも貢献しています。会員はカンダハル州を中心に、ヘラート、ホースト、マザリシャリフ、バーミヤン、ファラー、バグラン、ジャララバードやパルヴァーンなどアフガニスタン各地に散らばっています。
「C4Aの研究開発委員会の委員長として活動しています。私にとってC4Aは調整する場、多様性を受け入れる場、そして期待と熱意があふれる場です。特に自分にとって一番有意義だったのは、有能で情熱的かつ知性的な人たちが集まるネットワークを手に入れることができたことです。この団体は、自分の強みを利用してコミュニティに変化をもたらし、自国の発展に貢献したいというビジョンを持った人の集まりです。仕事面では、グッドガバナンス、女性のエンパワーメント、平和構築と紛争解決、教育、政治や文化など幅広い分野に影響をもたらしたいという自分の目標が結果を出しつつあります。自分の周りの人々の生活、意識や態度に変化が見られます。創設者の一人として、C4Aを立ち上げた当初のビジョン達成に貢献するのを実際に目にすることができています」とグッドガバナンスと安全保障の専門家としてカブールの地方自治局(IDLG)で勤務するSooriya Aryaさんは話します。
C4Aは「女性ファースト」の方針をとっています。会計、メディアとイベント管理委員会の委員長は女性の委員長を任命することにしています。また、イベント等何かの機会がある時は、優先的に女性にチャンスを与えます。C4Aが主催した2021年3月5日の国際女性デーのイベントには、約200人の女性が参加し、ネットワークを広げ議論する場となりました。
C4Aはまだ新しい組織ですが、次々に目標を達成しています。首都と地方ではすでに何度か政策対話を実施しており、中国、インド、パキスタンや米国の参加者とジェンダー、平和、教育や持続可能な開発目標などについてオンライン会議で議論しました。また、主要政府関係者に働きかけ、様々な分野の研究結果や分析データのやり取りを行っています。C4Aの会員リストは、人材リストとして世界銀行、大使館、NGOや民間企業などのドナーと共有されています。C4Aのネットワークと能力強化によってすでに40人以上の会員が官民両分野で採用されています。
その他の活動として、地方で新型コロナウイルス感染症啓発プログラムを実施しています。農村住民向けに一般的な衛生概念を含む感染症対策をオンラインセミナーで配信しています。また、C4Aの会員はアフガニスタンの国家平和評議会にも参加し、根拠に基づいた解決策を提言しています。
「C4Aは私の意識を高め、価値観に変化をもたらしました。C4Aが主催したイベントに参加して、社会の課題についてもっと深く知りたいと強く思うようになりました。例えば国際女性デーやカブール大学襲撃の後に開催された若者教育のセミナーなどです。また、C4Aの活動は若者が直面する課題や我々のアイディアや提言を政府へ届けるチャンネルでもあります。今度我々若者の課題や計画についてカブールの自治体の管理職と話し合うことになっています」と都市開発省のモニタリング評価課長を務めるMohammad Rasool Niaziさんは話します。
しかしながら、C4Aの設立とその後の運営や急速に増えた会員の管理は簡単なことではありませんでした。SharifiさんはNoorzaiさん、Anwariさんやその他のC4A創立会員と共に3年間かけて一万人以上のアフガニスタンの専門家と話をしてきました。「まず新規会員獲得のためには、シンクタンクという構想をわかりやすく説明し納得してもらう必要がありました」とSharifiさん。事務所の開設、資金確保、女性会員獲得のためにイベントのケータリング会社を探したりとやるべき事は山積みでした。「多くのアフガニスタンの女性は女性会員が多い団体に参加したいと思っています。最初は女性が2人しかいなかったため、女性会員を増やすのに苦労しました。徐々に女性会員が増えていったのは、みんなの熱意のおかげです」
C4Aの活動は調査研究、記事執筆やイベント開催など多岐にわたります。また、一つのグループに250人以上の会員が参加する7つのオンラインチャットグループも運営しています。人員や資金も必要です。今後は、アフガニスタン各地から300人以上参加して成功裏に終わった平和セミナーの成果を基に、農業、ジェンダー、保健など他の分野のセミナーを開催したいと考えています。また、データを有効活用する研修や会員の研究結果や論文等を掲載する「C4Aタイムズ」というニュースレターの発行も検討しています。