呉ロータリークラブでのオンライン講演

2021年2月9日・広島 - まるで池に投げ込まれた小石がさざ波を起こすように、新型コロナウイルスのパンデミックは、家庭や職場、地域社会、政府と国民との関わり方に至るまで私たちの生活のあらゆる面に波紋を広げている。国際的な開発課題にも波及しており、実効的な変化がもたらされない限り、影響は拡大するであろう。

2021年2月4日に開催された呉ロータリークラブ国際奉仕委員会主催の例会で、国連ユニタール広島事務所・持続可能な繁栄局の隈元美穂子局長が講演を行った。約70名のロータリークラブ会員と来賓を対象に、新型コロナウイルスの危機からの「より良い復興(Build Back Better)」を遂げる必要があるとメッセージを伝えた。

このほど発表された持続可能な開発目標(SDGs)報告書2020によると、2015年の採択以来、目標達成に向け一定の進展が見られていた。特に女性や子どもの医療へのアクセス、電力へのアクセスや、政府機関に占める女性の割合は確実に増えている。しかし、食糧不足、自然環境の悪化や不平等の拡大は未だに解消されていない。新型コロナウイルス感染拡大がこれまで手にしてきた成果を帳消しにし、状況を悪化させている。

「世界初の新型コロナウイルスクラスターが世界保健機関(WHO)に報告されたのはほんの13か月前ですが、今では1億3千万人以上が感染し、220万人が亡くなっています。家庭やコミュニティの混乱は計り知れません。各国の社会経済や開発も壊滅的な打撃を受けています。2020年の世界経済の成長率はマイナス3.5%と推定されており[1]、昨年は約7100万人が極度の貧困へ追いやられました。『あらゆる場所であらゆる形態の貧困に終止符を打つ』というSDGsの目標1の達成は、非常に厳しくなっています。新型コロナウイルス感染症拡大により、世界の貧困はこの数十年で初めて増加しました」と隈元局長は語る。

また、小学校の授業から会社の研修まで様々な学習の場がオンライン化する中、情報格差や教育格差が拡大し、SDGsの目標4「すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」の達成も難しくなっている。すべての目標達成に影を落としているのである。

「新型コロナウイルスのパンデミックにより、現代社会の脆弱性が露呈しました。強靭なポスト・コロナ時代の社会を作り上げることで、感染症や自然災害などによるリスクを分散し、地球と人間が共存し繁栄できるような生き方を確保する必要があります。私たちも行動変容を求められています。そのためにはSDGsが鍵となります。環境、地方経済や教育など、特に状況が悪化している分野において、ロータリークラブの皆様が長年の奉仕活動で培った経験がより良い復興へ導く手助けになると期待しています」と隈元局長は締めくくった。

[1] 国際通貨基金(IMF)世界経済見通し(20211月改定見直し)

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