広島大学医学生へのエール ポスト・コロナ時代を切り開くために

オンライン講義「普遍的平和をめざして」

2021年2月3日・広島 - 新型コロナウイルスのパンデミックにより、「コロナ前」の生活スタイルは環境面においても経済面においても持続可能ではなかったことが明らかになった。今後同様の危機を回避し、社会の中で最も弱い立場にある人々も生活を脅かされない、公正で持続可能な未来を創るためには、国連の持続可能な開発目標(SDGs)がポスト・コロナ時代の社会を築くための青写真となる。

これは、広島大学の講座「普遍的平和を目指して」の一環で、国連ユニタール広島事務所・持続可能な繁栄局の隈元美穂子局長が医学部の学生を対象に行った講義の骨子である。大学内外から講師を招いて実施しており、持続可能性と平和の交わりを探り、国際的な視野を身につけ、学生のもつ医学の知識と結びつけていくことを主眼とした連続講座だ。今回の隈元局長の講義は、オンラインで約90名の医学部生に対して行われた。

将来医療分野の専門家となる学生たちに、新型コロナウイルス感染を起因とする様々な心身の健康問題にこれから最前線で対応することになる、と隈元局長は指摘。「パンデミックと相まって、気候の危機とそれに伴う急激な環境破壊、貧富の差の拡大、各地での対立の深まりや移民問題などが、これまで約20年間で私たちが手にしてきた成果を帳消しにしてしまっています。この結果、貧困ラインを大きく下回る生活基準で暮らす人々、教育を受ける機会や社会との接点を失う子どもや性暴力が増加し、すでに脆弱な状況に置かれている人々がますます苦境に立たされている。これらの要因すべてが今後日本や世界の医療システムにますます負荷をかけていくでしょう」と語る。

隈元美穂子・国連ユニタール持続可能な繁栄局長

同様の議論は世界中で行われている。しかし、広島で講義が行われたことに重要な意味があり、学生への暗黙の挑戦状でもある。

「広島は、世界で初めて原子爆弾が落とされ、壊滅的な被害を受けた都市であることを心に刻むべきです。同時に、不死鳥のように廃墟から復興を遂げ、新しく強靭な街づくりを成功させたことも忘れてはなりません。復興の根幹には、軍都から国際平和都市への変遷があります。広島が変化を遂げるのを支えた創意工夫と同じように、SDGsを指針としてポスト・コロナ時代の新しい社会を築いていくことができるはずです」。

日々新型コロナウイルスと向き合う学生たちのたゆみない努力に感謝と敬意を表し、新たな時代への社会変革の担い手となることへの期待で講義を締めくくった。

「新型コロナウイルス前の生活に戻るべきではないのです。現状を好機と捉え、持続可能な社会へ変革を遂げなければなりません。未来志向で包括的な、新しい生活様式へ移行するということです。私たち一人一人が、行動変容をはじめなければ」と隈元局長は語り掛けた。

国連ユニタール広島事務所は中四国唯一の国連機関であり、世界平和と開発に積極的に貢献したいという広島の人々や行政の想いを汲んで広島に設立されました。広島事務所ではその立地を活かし、主に平和構築、紛争後の復興、核軍縮など国際平和と安全保障に関する幅広い分野の研修を実施しています。長期研修やオンライン研修など、受講者のニーズに沿った様々なスタイルや内容の研修を提供し、SDGsの目標達成に貢献しています。

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