2019年に広島で実施された国連ユニタールの研修に参加するMariam Ghaznaviさん(アフガニスタン)

新型コロナウイルスのパンデミックの危機と混乱を乗り越え立ち上がるためには、女性のリーダーシップがこれまでにも増して必要です。国際女性デーを祝し、発展途上国や脆弱な立場にある人々の生活を向上するために奮闘している国連ユニタール研修修了生をご紹介します。

タリバン政権崩壊後20年が過ぎました。多くの若いアフガニスタンの女性は自分たちも社会で活躍する機会がある。自分自身で生き方を決めることができる、と信じて生きています。しかしながら保守的な風潮は根強く残っています。

私は女の子なので兄や弟と同じ権利はないと思っていました

アフガニスタン出身のMadina Walizadaさんは言います。

同じ研修に参加したアフガニスタン人女性のMariam Ghaznaviさんはこう話していました。

 

多くの人は負荷のかかる仕事は女性には任せられないと思っています。礼儀正しく品行方正な私では困難な課題に向き合うことはできない、と考える同僚もいます

他の国でも女性は同様の経験をしています。エチオピアの女性起業家Amen Sime Tadesseさんが経営する会社の社員は全員女性です。投資家に相談に行くたびに、男性を経営陣に加えるようにとの提案があります。「女性だけの会社はダメなのだろうか」とAmenさんは疑問に思います。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行が生活のあらゆる面に影響を及ぼし混乱を招く中、アフガニスタンやエチオピアなどの脆弱な国家がパンデミックの危機を乗り越えるためには女性の力が大きな鍵となります。

新型コロナウイルスの女性への影響

女性は新型コロナウイルスのパンデミックと戦う重要な役目を担う反面、家庭内暴力の増加、失業や貧困などジェンダー差による不平等な影響も受けています。

世界中の医療従事者の7を占める女性医療の最前線でコロナ禍と戦っています。また、ニュージーランドのアーダン首相や連立政権すべて女性党首であるフィンランドは、新型コロナウイルス感染症の拡大と闘う模範的で効果的な女性リーダーとして高く評価されています。

しかしながら、新型コロナウイルスのパンデミックは弱い立場にある人々、なかでも途上国の女性に大きな打撃を与え格差を拡大させています。女性は男性より賃金が低く、貯蓄も少なく、金融サービスへのアクセスも十分ではありません。また、インフォーマルセクターで働く割合も高く、経済活動の停滞による影響が大きいと言えます。都市封鎖や隔離は女性経営者が多い中小ビジネスや女性が多く従事するサービス業など対面での接客を必要とする業種にとって特に大きな打撃となりました。

2020年4月の国連事務総長の「新型コロナウイルスの女性への影響」報告書によると、女性は社会保障制度へのアクセスが低く、無償かつ目に見えない家事労働の多くを担っています。そして、新型コロナウイルス政策における意思決定の場への女性の参加率は極めて低くなっています。パンデミックが収束しても、負の影響は長年続くことでしょう。

国連ユニタールと女性のリーダーシップ

2021年の国際女性デーの国連のテーマは「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」です。持続可能な開発目標(SDGs)の目標5「ジェンダーの平等の実現」の中に、「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」とあります。また、分野横断的課題として目標1「貧困をなくす」、目標2「飢餓をゼロに」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標13「気候変動に具体的な政策を」や目標16「平和と公正をすべての人に」などその他の16の目標にも関連しています。

「新型コロナウイルスの危機からより良い復興を遂げるためには女性のエンパワーメント、特に女性の声を意思決定の場に反映することが重要です。我々は先進国と発展途上国での直接的または間接的なジェンダー差別に注視していきます。国連ユニタールではインクルーシブな社会を形成するために、様々な社会問題を解決したいと願う「チェンジメーカー」が知識やスキルを身につけ、ネットワークを築く手助けをしていきます。」と国連ユニタール広島事務所・持続可能な繫栄局の隈元美穂子局長は言います。

女性が正しい知識とツールを手にし、エンパワーされたという自信を持つことで家庭やコミュニティ、そして国のリーダーとして活躍できます。女性は革新的かつインクルーシブな解決方法で直面する課題を克服し、危機を乗り越える力を持っているのです。

コミュニティにおける女性のリーダーシップ

日本政府の支援のもと実施している国連ユニタールの津波防災研修に参加するLydia Sijpさん(クック諸島)

国や地方の政治の場で、女性はリーダーシップや様々な側面で多様な手法をとることができます。また、女性の視点と経験をもとに女性がおかれた現実を理解し、より効果的かつインクルーシブな支援政策や救済措置を考案することができるでしょう。

防災政策がよい例です。災害時には女性の方が被害を受けやすく、長期にわたるダメージを受けると言う研究結果もあります。女性リーダーが津波、洪水や疫病など様々な災害の影響を包括的に考えることによって、より効果的で強靭な防災対策に繋がります。

国連ユニタール広島事務所の「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」では小島嶼開発途上国(SIDS)の女性を対象にリーダーシップやコミュニケーションに関する能力開発を行っています。研修ではジェンダーに基づいた災害脆弱性を理解し、ジェンダー視点を取り入れた防災対策や復興計画を講じる知識やスキルを身につけます。本研修は日本政府の支援のもと2016年から実施しており、今年度で5回目の開催になります。

本研修に参加したLydia Sijpさんは、クック諸島で防災対策を担う機関(EMCI)の企画官として勤務する傍ら、自治会のリーダーとして毎年襲ってくるサイクロン対策に取り組んでいます。Lydiaさんは行政と地方自治体の防災対策の橋渡しをする重要な役目を果たしています。政府の職員として国家の防災対策を計画する際には現場の課題やニーズに耳を傾け、自治会のリーダーとして住民が公共サービス、情報や研修などのアクセスができるよう手助けをしています。

Lydiaさんの行政と地方自治体の橋渡し体制は、デング熱や新型コロナウイルスのパンデミック対策として保健省も着目しています。

保健省は地方の住民に直接働きかけるすべをもたないため、地域の防災対策委員会を緊急対策センターとして機能させたのです

Lydiaさんを含む研修修了生の活躍はコミュニティの女性や少女のお手本となっています。

村の委員会では女性が一歩踏み出す勇気を持ち、行動に移し始めています。優秀な女性はたくさんいます。彼女たちの背中を一押しするだけでいいのです。強力な助っ人になります

ビジネスにおける女性のリーダーシップ

日本政府の支援のもと実施している「国連ユニタール エチオピア、ケニヤ、ソマリアとスーダンの女性社会起業家研修」でプレゼンをするAmen Sime Tadesseさん(エチオピア)

国連ユニタールの研修修了生はビジネス分野でもリーダーシップを発揮し、社会の発展に貢献しています。

 

日本政府の支援のもと実施している「国連ユニタール エチオピア、ケニヤ、ソマリアとスーダンの女性社会起業家研修」に参加しているエチオピアの若き女性起業家Amenさん。研修終了後には社会に貢献する事業の起業準備を進めていきます。研修に参加した女性は社会のニーズに沿った、持続的かつ収益を生み出す事業を目指します。

社会やお客さんの課題解決につながるような持続可能性を大切にした商品を作りたいです

若者にIT研修を実施する会社で働くAmenさんは話します。ITの知識で若者の将来の可能性を広げ、エチオピアの長期的な成長に貢献できる人材を育てたいとAmenさんは考えています。

エチオピア、ケニヤ、ソマリアとスーダンから参加するその他の研修生も若者を対象とした研修や就職紹介、地元の素材と人材を使った手ごろな価格の住宅建設、農民やごみ拾いで生計を立てる若者の安全な水や衛生施設へのアクセス確保、良心的な価格の医療サービスの提供など様々な社会事業を計画しています。彼女たちは男性優位の起業界に風穴を開けようとしています。現在では中小ビジネスにおける女性経営者の割合は36%を占め、約1.9兆米ドルの収益を生み出しています。

女性リーダーのネットワーク形成支援

広島県の支援のもと長年実施している国連ユニタール「アフガニスタン奨学プログラム」OXUSグループ支援のもと実施した国連ユニタールとOXUSグループ共催の農業分野の能力開発の研修終了生のMariamさんは研修を通じて有益な知識やスキルを得たと話します。加えて、女性リーダーが活躍するために必要不可欠なネットワーク形成にも大変役に立ったと言います。

研修終了後には自分は独りではない。一緒に学んだ研修生、メンターやコーチがバックアップしてくれると強く感じました。性格も違えば経験や経歴も違う。でもそれぞれ同じ方向を目指して歩んでいる仲間です。アフガニスタンでは女性のキャリア形成支援や職場で女性の昇進を阻む障害を相談できる場所が少ない。でも今は研修に参加した仲間にいつでも相談できます。できるだけたくさんの同士と手を取り合い、同じ道を歩んでいきたい。

研修終了後Mariamさんは自分のような女性へ手を差し伸べたいと強く思い、ボランティアとして国連ユニタールの研修の講師やコーチを務めています。

ジェンダーに対する考え方を変える

多くの研修生は厳しい環境で働くことを余儀なくされています。研修に参加することによって新しい知識やスキルなどの技術を身につけるだけでなく、社会を変えていこうという意欲も刺激されます。つまり国連ユニタールの研修には波及効果があるのです。

エチオピアのAmenさんは国連ユニタールの研修に参加したことによって、目標に向かって進んで行くという意欲が湧いてきたと言います。

女性起業家は経済成長の重要な原動力であるということ。女性であることは素晴らしい。そして女性起業家は勇敢であることを学びました。

女性が管理職に就くことによって、男性の態度にも変化が現れます。Mariamさんはアフガニスタン財務省の関税支援・開発部長を務めています。初の女性部長として就任当初は懐疑的な意見が多くありました。しかし就任2年後には同僚の態度に変化が見られました。

私の昇進はジェンダー平等の目標達成という単なる政府の政策だ、と多くの同僚が考えていました。2年後の管理職会議で一般・管理職問わず、もっと多くの女性を雇用しよう。という発言を聞いたときは大変嬉しかったです。国連ユニタールの研修参加後、まず自分自身が変わらねばと思いました。自分に自信が付きました。他の女性や少女にも伝えたいです。やりたいことがあればそれに向かって進んで行けばいい。私たちは何でもできる。

スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)の支援のもと実施した「国連ユニタール最先端技術と持続可能な開発-人工知能を駆使したイラクとアフガニスタンの女性起業家研修」修了生のMadinaさんは話します。

今年の国際女性デーを機に、世界各地で社会を変えようと奮闘する国連ユニタールの女性研修終了生をご紹介しました。女性をエンパワーすることによって、女性自らが権利や意思決定権を主張し、リーダーとして活躍することに繋がります。国連ユニタールでは引き続き女性のリーダーシップ育成を支援し、新型コロナウイルスの危機からのより良い復興を目指していきます。

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